弁論ブログ

ディベートブログですがニッチなことを書きます。

Analysisモーションの"Opp cannot invent a new world to compare to!"について

こんにちは。

しれっと不定期更新になっていますが、週1更新は守りたく考えています。

 

 

モーションの類型にアナリシスモーションという形式があります。

 

アナリシスモーションに関して、以前はあまり明示的な見解がブリーフィング等で示されることはなかったのですが、

最近、Type of motionsというスライドがブリーフィングに挿入されるようになり、引用して使い回されています。(筆者がはじめて見たのは今年のQDOですが、どの大会が元祖かは知りません)

そしてその中にAnalysis motionsはこういう風にディベートしてくださいということが書いてあります。

だいたいどの大会も同じ内容のことが書かれているので、とりあえず一番最近あった紅葉杯のブリーフィング資料のURLを貼ります。

紅葉杯 2018 Adjudication Briefing .pptx

 

特に、This House Regrets XXという形式が多いと思うのですが、この形式についてはこのように書かれています。

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つまり「XXがある世界(our current worldもしくはS.Q.」と「XXが無い世界(alternative worldもしくはcounter-factual world」を比較することが求められています。

 

これはすなわちこの類型のモーションは、This House Prefers a world in which there is no XX と同値に言い換えられることがわかります。

 

一方、This House Prefers a world in which~について書かれたスライドを見てみましょう。

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ここで、Opp cannot invent a new world to compare to!という文章において、

この類型のモーションでは、ポリシーモーションでいうところのオルタナティブポリシーあるいはカウンタープラン(以下カンプラと書きます)に当たる別の世界線を創造してはいけないというルールが規定されています。

 

 

これらをまとめると、(少なくとも上記ブリーフィングを採用している大会の中においては)

(1)Regretsモーションと、Prefers a worldモーションは同値である

(2)これらのモーションにおいて、Oppは世界改変によってGovの提示してきたProblemに対するアタックをすることは禁止されている(現実世界の枠組みの中で解決策を提示しないといけない)

となります。

 

 

最近ふと気付いたのは、これらの解釈を採用した時に、

GovのExclusivityに対する証明責任を軽くしてしまうのではないか

ということです。

 

そう思った具体的な経緯としては、紅葉杯で

THR the perception that soldiers are heroes

というモーションのラウンドをジャッジしていた時に、

 

Govが「このperceptionは政府のプロパガンダによって作り出されたもので、irrational choiceを兵士になる市民に対してさせようと意図するものだからよくない」みたいなアーギュメントを言っていて、

Oppが「それは政府のプロパガンダをregretする問題であって、perception一般の問題ではない」みたいな反論をしていました。

 

その反論を聞いてすぐの時には、まあそうっちゃそうかなくらいに考えていたのですが、ふとOpp cannot invent a new world to compare to!が頭をよぎりました。

すなわち、この反論は、「perceptionが存在しない世界」<「政府のプロパガンダが無い世界」を支持する反論にすぎなくて、

政府のプロパガンダが無い世界をOppが創造できないルールであれば、反論としてなりたたないのではないか、と思いました。

(このラウンドに関しては、他の議論部分でも十分順位をつけられたので、ルール的な話による立論・反論の解釈は順位には入り込みませんでした)

 

すなわち、世界比較型のAnalysisモーションにおいて、Exclusivityは現実世界に対しての比較優位性のみが証明責任として生じる、ということです。

 

ポリシーモーションで例えてみると、Exclusivityの証明責任は、

モーションが示す政策が採られない世界においてでも、モーション以外の政策(カンプラ)を採択することで問題が解決できるなら、モーションを採択する理由は弱くなるよねという点から生じています。すなわちOppの提示してくる全てのカンプラ世界に対して比較優位性を示す必要がある。

つまり、Oppがカンプラを打てないというルールが加われば、現行政策との比較さえすれば、Problemが固有であろうが無かろうが比較優位性は得られるということになります。

実際、カンプラ禁止のルールが採用されている入門向けアカデフォーマットでディベートしたことがありますが、普通のフォーマットだとExclusivity薄めのマターが妙に強いマターになったりすることがありました。

 

 

 

これは、モーションによっては直感的な証明責任と、ルール上の証明責任がずれうるということであり、ルールとしてブリーフィングに書く際には、慎重に議論したほうがよいのではないかと思っています。

ただし、Oppが自由にinvent new worldできてしまったらしまったで、一部のモーションではGovの証明責任が想定以上に重くなることがありえるので難しいところです。

 

 

昔練習で、「TH prefers 個人に外観の差がない世界」みたいなモーションのGovをやった時に、OppのN島さんが「外観を個人が自由に選べる世界」を創造してきて焦りました。

また、WUDC 2012 GF TH supports nationalismでも、PMはOppがcosmopolitan utopiaを持ってくるのはダメってセッティングをしているのは有名ですね。