弁論ブログ

ディベートブログですがニッチなことを書きます。

”Free will doesn't exist"アーギュメントについて

こんにちは。

 

Free will doesn't existというアーギュメントがあります。

「Freedom of choiceとかAgencyとか言うけど、そもそもFree will(自由意志)なんてものは存在しない(理由は後述)んだから、我々が自由意志だと感じているものは重要ではない」みたいな感じの議論です。

ひろよこ氏が過去に記事にしています。

 

目次です。

 

最近のトレンド?について

上の記事が書かれたのが3年ちょっと前で、それから特に国内では聞くことはなかったんですが、この間のタイワールズの動画を見ていて気になったので記事にしています。

気になったのがOpen Semifinalで、モーションがThis house prefers a “Brave New World” to the status quo in Western Liberal Democraciesというやつです。

Brave New Worldはインフォスライドもありますが、原作SF小説のあらすじを引用したほうがわかりやすい気がしたのでそっちを貼ります。

以下Wikipediaより

人間は受精卵の段階から培養ビンの中で「製造」され「選別」され、階級ごとに体格も知能も決定される。また、あらゆる予防接種を受けているため病気になる事は無く、60歳ぐらいで死ぬまで、ずっと老いずに若い。ビンから出て「出生」した後も、睡眠時教育で自らの「階級」と「環境」に全く疑問を持たないように教え込まれ、人々は生活に完全に満足している。不快な気分になったときは、「ソーマ」と呼ばれる薬で「楽しい気分」になる。人々は、激情に駆られることなく、常に安定した精神状態である。そのため、社会は完全に安定している。ビンから出てくるので、家族はなく、結婚は否定されてフリーセックスが推奨され、人々は常に一緒に過ごして孤独を感じることはない。隠し事もなく、嫉妬もなく、誰もが他のみんなのために働いている。一見したところではまさに楽園であり、「すばらしい世界」である。

 

物質的幸福がある代わりに自由とか自己決定が一切ないような世界なわけですが、

セミファイの2部屋のうち、どちらのOGも自由に対する反論(あるいはプリエンプション)として、Free will doesn't existの議論を立てていました。

 

Yale大学がOGの部屋。DPMから(17:12くらい)

 

Belgrade大学がOGの部屋。PMからFree will doen't existを出している。(5:49くらい)

あまり界隈の流行はよく知らないのですが、

複数の部屋で同じ議論が出るということは、そこそこ定番の議論になっているんじゃないかという気がします。

  

 

自由意志が存在しない理由まとめ

ここで、自由意志が存在しない理由付けはいくつかパターンがあるのでまとめます。

動画で言ってることを、昨日今日ググった知識で補足したものなので、間違ってても責任は負いません。

 

(1)決定論的宇宙

そもそも宇宙というものは原子やら粒子やらの集まりなので、物理法則によって全て決定される。つまり、宇宙が誕生したときの時の粒子の初期情報で未来の全ての事象が決定してしまうため、人間の意志などというものがそこに介在する余地はなく、自由意志は存在しない。

 

(2)量子力学的なランダムさは自由意志ではない

量子力学によると、物質の位置と速度は完全に決定できず、確率的に存在する。つまり、事象というものにはランダムさがあるかもしれない。しかしそんな量子力学的なランダムさが「人間の自由意志」であるということはとても考えられないので、自由意志は存在しない。

 

(3)脳神経科学的な観点

人間の行為というものは、脳神経の配線(環境やホルモン状態によって100%決定する)によって全て決定する。実際、脳波を観察する実験によると、人間が何かを決定したと感じるコンマ数秒前に、神経の発火が観測されており、「脳が決定した後に、人間が意志決定したと錯覚させる情報伝達が生じる」というのが正しく、身体の生物学的反応以上の「何か」上位概念は存在しない。

 

(1)と(2)はひろよこブログにも取り上げられているHWS RR 2016のOO(Cambridge大学)を参考にしていて、(3)は上に貼ったYale大学をベースにしています。

 

 

Free will doesn't existの汎用性に関して

それで興味があるのは、この議論がどこまで汎用的に使える議論かということです。

ディベートにおいてパターナリズムvsフリーダムみたいなモーションはとてもたくさんありますが、それのパターナリズムサイドに一般に使えると議論の幅が広がってよさそうな感じがします。 

たとえばTHW ban tobaccoで、Freedom of choiceよりもより客観的な功利である健康(健康がより客観的な功利であることは別途証明が必要)が重要な理由付けとして、①上記(1)-(3)の理由で自由意志は存在しないから ②Even if 自由意志が存在して、物理法則に抗うことが出来たとしても、タバコに含まれる化学物質の中毒性がその能力を奪ってしまうから喫煙に関しては特にChoiceではない(ちょっと普通の議論っぽい)みたいな感じでしょうか。

ただ、一般的な政策系モーションにおいては、現実に政府は自由意志の存在を前提とした政策決定を取っていて、その価値観をひっくり返せるのかというと怪しい気もします。

逆に、ワールズのSemifinalみたいな、prefer a world系だったら、現実の政府の政策決定モデルは別に自明じゃないって言えるので、もうちょっと使いやすそうな感じがします。

 

CJSにおけるFree will

また、CJSにおいては割と現実に(哲学ではない領域で)議論が行われているっぽいです。

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これはWikipediaなのでちゃんとしたソースとは言い難いですが、たしかに「刑法学 決定論」とかでググってみても、それなりにちゃんとしてそうな雰囲気のする専門媒体でもそういう起稿があったりします。 

ディベート的にはEUDC 2016 Semifinal COみたいな感じで、そもそもFree will(agency)が無いので、CJSにおいてretributionは考慮するべきではなく、刑罰はrehabilitationを最重視すべき、という風にすれば良い感じでしょうか。

仮に人々が自由意志のようなものを感じていたとしても、証明されていない虚構的仮説である自由意志の存在に基づいて罰を与えるのは、「疑わしいことは被告人の便益になるようにするべき」という刑法の原則に反するということも付け加えるとちょっと強そうに聞こえますね。

 

他にこの動画で誰かが使ってたとかがあったら教えてください。

あと使えそうなモーションが出たら使ってみたいと思ってるんで、こういう風に使えそう・反論できそうみたいなのもコメント欄に書いてください。

以上です。 

 

おまけ

自由意志についてわかりやすかったYoutube動画

英語のやつ

 

日本語のやつ