弁論ブログ

ディベートブログですがニッチなことを書きます。

某メーカー知財部のやつと特許モーションのプレパをした結果www

こんにちは。

 

JBPに出ようと思うので、プレパ練をしていたのですが、一回目はアイデアがそこそこでるモーションで感覚を取り戻すのがいいだろうということで、特許系のモーションのプレパをしました。

結果として、そこそこ良さそうなケースができたので、文字に落としてみます。

ちなみに他の種類のモーションはマジでスカスカのアイデアしか出なかったので、大会に対しては危機感を覚えています。大事なラウンドで知財モーションが出題されればなんとか。

 

人物紹介

知財部のやつ:

某メーカー知的財産部勤務

年間100件以上の権利化業務に関わっている

秋Tで決勝にいったことがある

 

・ぼく:

某メーカー開発部署勤務

これまでに出願した特許は2報

秋Tで優勝したことがある

 

 

モーション

WSDC 2016 R5(prepared):

THBT technology companies with significant market shares should not be eligible for patent protection

和訳:市場において大きなシェアを持つテクノロジー企業は特許による保護を無効にするべきである。

→メーカー勤務として明らかにやりやすいOppのプレパをしました。

テクノロジー企業の定義は製造業もIT系もひっくるめて考えています。

 

Oppのケース

 ・特許の公開によって技術を発展させることができるため、社会的な便益がある

(1)特許は直近で実施するような技術に限らず、やや先の将来にならないと実用化できないような技術を発展させることを促進・権利保護する側面が存在する。

(2)特に、経営が安定している大企業は直ちに実用化が期待できるわけではない技術に対しての研究開発に対して投資できるキャパシティがあるため、こういった将来の技術的発展には大企業の研究開発というものが必要不可欠である。

(3)特許として出願された技術は1年6ヶ月後に公開されるため、別の企業が特許公報を読み、その技術を踏まえた上でそのベース技術を応用した技術を開発し、特許出願するということが頻繁に生じる。この場合、ベースの技術の特許と応用技術の特許の権利をそれぞれの企業が所持することとなるが、その応用技術が魅力的である場合、ベース特許の権利を持つ企業が応用特許をライセンス契約(使用料を払って特許の使用許可を得ること)したり、あるいはお互いに実施できるようにクロスライセンス契約を結んだりする。

(4)このようにして、大企業が将来の基礎技術を開拓して、他の大企業や中小企業などがその基礎を踏まえて、実用化のための製造方法や応用の研究といった深耕を行い、社会技術が発展するというサイクルが現状行われている。

(5)また、大企業はこういったサイクルを理解しているし、実際に単独で実用化まで持っていけるかわからない技術を秘匿するメリットは薄いため、特許としての出願を推奨することが多い。

(6)プランを採択した世界においては、大企業は権利化ができない基礎研究に割く予算を低減させるし、企業が持つあらゆる技術をなるべく秘匿しようとするため、特許化された技術のライセンスでの相互利用による技術発展は大きく遅れる。これは社会的に大きな損となる。

インパクトは環境とか医薬とかの人間に影響が大きそうな例をいい感じにイラストする

 

財産権みたいなアーギュメントもあると思いますが、書くの疲れたのでこれだけにします。

 

Govの議論に対する反論

・権利の独占によって、購買者に対して不利益が生じるみたいな話

(1)自社実施しないのに、権利だけ保持するような場合について

(a)自社実施する可能性がない特許をただ持っておくのは単純にメリットがないし権利維持にはいくらかのコストもかかる。実施したいと考えている会社にライセンス契約をすることで数%のライセンスフィーがもらえるので権利だけ保持して他者に実施させないというのは考えづらい。

(b)もし仮にそういった企業が重要な特許を実施しないのに保持し続けた場合においても、権利者が数年間実施していない特許に対して、実施を希望する企業や人が強制的に実施権を得ることを特許庁に訴えることができる規定が存在する。

 

(2)自社実施する場合に、特許によって競争が阻害されるかどうかについて

(a)そもそも特許権は研究開発への投資の結果としての権利であり、それが市場にとって他が持たない魅力的な技術なのであれば、価格の上乗せは正当な対価であるため問題がない。

(b)いくらsignificant market shareといっても、2番手・3番手の企業との競争が全くないような業界というのはレアケースであり、もしそういった業界である場合、そもそも特許権以前に反トラスト法の領域の問題であるため今回の論題とは関係がない。2番手・3番手の企業もそれなりの大企業であることが一般的なので、スマートフォンや自動車などの数多くの技術が盛り込まれた製品において、お互いが製品に対して不可欠かつ回避不可能な特許を持っている場合が多い。そういった場合、クロスライセンス契約を結んでお互いに抵触する特許の使用を許諾するというようなケースが多く、結果としてお互いに製品を適正な価格・品質で販売することとなり、消費者は競争による便益を享受することができる。

 

特許権は社会的便益のためにあるみたいなプリンシプル

(1)特許権は財産権としての側面が強い。他の財産権で例えるならば、誰かが作った音楽を自由にコピーして無料で再配布したり、誰かが所有している土地を好き勝手に利用できないのは、社会的な便益以前に、その人がその財産に対して権利を持っているからである。

(2)大企業と中小企業の特許取得に対して格差が存在していたとしても、それは大企業が良い製造設備を取得することができたり、良い広告戦略を打つことができたりすることと本質的な差はなく、他の知的/物的財産権との線引きをする必要がある。

(3)仮に社会的意義とのバランスが必要であるとしても、20年で失効して公知の技術となるという側面でバランスが取られている。大企業に対して一切の権利を認めない正当性はない。

 

 

おわり