こんにちは。
今日は関西の某有名OBのK氏から寄稿文をいただいたので、更新しています。
目次をつけるために見出しをつける等の些細な編集はしていますが、基本原文をそのまま掲載しています。
↓サムネイル用トレーニング画像。お盆休みにK氏に1年ぶりくらいにあった時に、めちゃめちゃガタイよくなっててビビりました。
ちなみに彼は年に1回だけお盆休みに関西練習会に行くタイプのディベートへの関わり方をしているらしいです。
目次
- 緒言
- なぜ各大学のディベートトレーニングは、全体の底上げに成功しないのか
- 体系的なレクチャー・ディベートトレーニングが設計できていないのではないか
- 理想的なディベートトレーニングの定義
- ディベートに必要な能力の定義
- 各能力がいつ達成されるべきか
- 結言
緒言
最近のディベートを見て思いますが、やはり過去も現在も育成というのはどの大学も共通に抱える課題なのではないかと感じています。
うまい特定個人は最初から最後までうまい場合が多く、反対に下手な人はなかなかうまくならずに辞めていくケースは私の現役の時からめちゃくちゃ問題で、いろいろレクチャーをしたり、大会に出まくったり、練習会に行きまくったりとしても結局うまくならず、疲れて辛くてやめていくことが多かったです。
私はある大学の部長的なポジションにいましたが、このなかなか部全体として上達させることができず、めちゃくちゃ悩みました。部としてのブレイクがゼロになるケースもあり、その時は本当にどうしていいかわからずにつらかったのを思い出します。
正直、あの辛さでディベートをやめてもおかしくない、と振り返って思うのですが、やめなかったのはそういう問題へ一緒にとりくむ仲間がいたからでしょう。その取り組む仲間の一人にはもはやなれませんがそういう全国の部長さん、先輩、老益に向け、まさにザ・苦悩のもととなる論点を一緒に考えていこうと思っています。
なぜ各大学のディベートトレーニングは、全体の底上げに成功しないのか
現役、社会人としてだいたい5年ほどディベートコミュニティを観察する中で、以下の2つの仮説に辿り着きました。
A)体系的なディベート、知的生産・議論の考え方が整理されていないのではないか
B)体系的なレクチャー・ディベートトレーニングが設計できていないのではないか
今回はまずB)について考えていこうかと考えています(Aではなく)。すでにA)は種々の試みから何となく体系化しようと考えられている人もいそうなのですが、トレーニングをどう組むか、設計するかという議論は、なかなかなされていないと感じるからです。
トレーニングプログラム自体は多々あるものの(夏セミ、ADI、アジア橋等々)、個別最適ではなく、全体最適としてどのようにあるべきなのか、という議論とその議論に基づいた実行はもっとなされてもいいのではないかと思います。そこでまずはB)から考えていきたいと思います。
体系的なレクチャー・ディベートトレーニングが設計できていないのではないか
こう考えている背景はいくつかあります、
まずはちょっとさっき書きましたが、トレーニングプログラム自体は最近整備されているものの、それが結局全体として何を達成したいのか、があまり明確ではなかったからです。
例えばADIに行った1年生は、夏セミで何をまなべばいいのでしょうか。反論がうまくなるにはアジア橋に行けばいいのでしょうか。各大学でやっているレクチャーと夏セミ、ADIの違いは何でしょうか。こういう質問に体系的にこたえられない限りなかなか1年生もどうやって成長していけばいいのかわからないでしょう。
また各大学でのレクチャーが、かなり属人的に行われているため、レクチャラーの力量に依存するケースもあるかと思います。たかだか地方大会でQFに1回だけいったひとが一人で作ったレクチャーはお世辞にもいい質であるとは言えないと思います。(逆に実際には評価されない可能性もあるのではないでしょうか)
理想的なディベートトレーニングの定義
ではどうすればいいのでしょうか。私個人の見解ですが、まず理想的なディベートトレーニングをJPDU、JPDU関西、JPDU九州レベルで、またはもっと小さいレベルの各大学でもいいですが、十分な実績を持った人を入れた形で定義するべきだと考えています。
そうなると、定義の仕方を議論するべきかと思いますが、理想的なディベートトレーニングは4つのステップで達成されるのではないでしょうか。
- まずはディベートにおいて、必要な能力を定義する
- 次にどの段階で、どの能力が、どの程度必要か、身についているべきかを明確にする
- 最後にそれに従い、いつ、何をどのようにトレーニングすべきなのかを定義する
- 実際にトレーニングプログラムを実行する
ちなみにここでのミソはまずそもそもディベートがうまくなるには、どんな能力が必要なのかを考え、それをベースにトレーニングを設計しましょう、ということです。
ディベートに必要な能力の定義
私が考えるとしたら、ディベートに必要な能力、その達成度を考えるとしたら、
某JPDUTのスコアリングを一部参考にして、、、
論点設定力:
議論を立てるために、必要な論点(サインポスト)を設定することができる能力
- ランクC:論点(サインポスト)は設定できるが、各々がどのようにモーションをサポートするかわからない
- ランクB:モーションのサポートにつながる論点(サインポスト)を適切に設定することができる
- ランクA:相手のケースを踏まえ、最初から相手との比較を念頭においた論点を設定することができる
論理的説明力:
設定された論点(サインポスト)を、論理的に証明することができる能力
- ランクC:説明はしているが、論理的なつながりが不明確
- ランクB:論理的に説明することができ、ある程度その説明で納得できる
- ランクA:論理の強度は相手の反論を寄せ付けないほどであり、複数のロジックが具体的な例に基づいて説明されている
反論構築力:
相手の立論を、反論を用いることで効果的に弱めることができる能力
- ランクC:反論はしているが、自分の論理をぶつけるだけ、もしくは反論が的を外れており、相手の議論が弱まっていない
- ランクB:相手の立論に対し、Not True型の反論を活用し、相手の議論の帰結が発生する可能性が少ないことを効果的に立証している
- ランクA:相手の立論に対し、Not True型、Not Important型、Flip型などの反論を活用し、各論理階層に対して効果的な反論を繰り出し、相手の議論の帰結が発生する可能性が少ないこと、発生しても重要ではないことを効果的に立証している
議論比較力:
相手と自分の議論を比較することで、勝利を決定づけられる能力
- ランクC:比較はしているものの、よくわからない
- ランクB:相手の議論に対して、比較を行うことができている
- ランクA:相手のキャラクターに対してのミクロな比較、議論に対してのマクロな比較をおりまぜ、自サイドの優位性をクリアに証明できている
くらいでしょうか、多すぎてもなんか判然としないので、一応4つくらいで押さえていますが、これをベースにするとかなり日々のフィードバック、トレーニング設計がいい感じになるのではないでしょうか。
(ちなみにこれは、春T2014のジャッジ評価制度に一部着想を得ています。さすがAK氏、NBSM氏、MO氏、NA氏、ND氏ですね、さすがです)
各能力がいつ達成されるべきか
さて必要な能力が定義できたら、今度はどの能力がいつ、どのレベルに達するべきかを考えていきます。私の想定だと、平均的国公立大学所属、公立高校出身、ディベートは大学から始めました系1年生ディベーターは、まず10月までに論点設定力と論理的説明力を、古典モーションにおいて、ランクBに達する必要があると感じています。
またエイジアンシーズンが始まる~ジェミニまでに、反論構築力及び議論比較力を古典モーションにおいてランクBに達し、何か得意な部分でランクAを目指す、という感じになるべきなのではないでしょうか。
上記をベースに、エリザべ・若葉くらいはお試し期間なので、ノーカンとして、7月ごろから本格的に練習を開始できると仮定すると、7月テスト終わりには、いったんがっつり、論点設定力と論理的説明力に対するレクチャーをみっちり行うべきだと考えます。
特に、公立高校出身、大学からディベート始めました系ディベーター(KDDですね、いわゆる)は論点設定しないといけないというそもそもの概念を知りません。そのため、1日くらい時間をとって、論点を設定しなければいけないんだよという練習をリアルにみっちり、実践を兼ねてやるべきだと思います。
結言
というかんじでディベータートレーニングを設計していくべきなのでは?ということが今回の結論です。あえていろいろポジションをとってみましたが、議論のスタートとしてはこのくらいかなと感じています。
まあ議論するだけでは何も変わらないので、実行するかどうかだとは思いますが、、、
以上